一万五千回のドキドキと幸福感

1万5千回のドキドキと幸福感。

今年で新居浜に帰ってきて21年たちました。産科診療をしていて、祈るような気持ちになることが1人の妊婦さんで必ず2回あります。1回は、子宮内の胎嚢のなかに胎児心拍が確認できるかどうかの時です。祈るような気持ちで超音波プローブを当てます。折角 妊娠されたのに胎児の生存が確認できないとき、ご本人の落胆は見てられません。流産率は約15%程度といわれています。自分自身もこの状況をどのように伝えようか毎回悩みます。胎児心拍が確認できて、「しっかり育ってますよ」と伝えることが出来た時はとても幸せな気持ちになります。

2回目はやはり分娩の時です。陣痛発来して妊娠経過を診ているときは、無事を祈る気持ちで経過観察しております。元気な赤ちゃんが生まれたときのお母さんの安堵した幸福な顔を拝見すると肩の力が抜けて、幸福のおすそ分けをしてもらえます。それ以外にも妊娠経過にはドキドキすることは多々ありますが、必ずこの2回はやってきます。

産科診療は、結果が良いととてもハッピーなのですが、逆だと精神的ダメージは計り知れません。そして胎芽、胎児の発育は医療ではどうしようもないことが多いので祈る気持ちでいつも診察しています。新居浜で最低1万5千回ドキドキして同じくらい幸福感を味わったなあとしみじみ感じている今日この頃です。そして、これからも続いていくことでしょう。